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【ビジョン】100年後も輝く ものづくりのまち かぬま
100年後も輝く ものづくりのまち 鹿沼
このビジョンは鹿沼商工会議所 創立80周年を記念し「 100年後も輝くものづくりのまち鹿沼を目指して 」
一般財団法人ローカルファースト財団 理事 主席研究員、日本商工会議所 まちづくりタスクフォース委員
鵜殿 裕 様を中心に取りまとめたものの概要版となります。
鹿沼商工会議所 2026年6月
1.地方都市の現状と課題
我が国の地方都市は、少子高齢化による人口減少に加え、雇用のミスマッチや都市の魅力・機能の低下を起因とする若者・女性の流出という「二重の人口減少」に直面しています。投資が十分に進まず、空き家・空き店舗の増加や地域交通の弱体化といった「地域基盤の脆弱化」が、さらに人口減少を加速させる「負のスパイラル」に陥る地域も少なくありません。
鹿沼市の人口も1999年の104,798人をピークに減少を続け、2026年1月1日現在で89,471人と9万人を割り込み、2050年には64,621人になると推計されています[i]。これに伴い労働力人口も、2020年の50,839人から2050年には31,069人へと約4割(▲38.9%)減少する見込みであり、人手不足が経済の維持・成長の足かせとなりかねません。
[i]国勢調査、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来人口推計(2023年推計)」、鹿沼市「推計人口」。
2.鹿沼市の強みはものづくり
一方で、鹿沼市の域内総生産(GRP)は、2010年から2022年にかけて、第2次産業が1,680→2,288億円(+36.2%)と伸びたことで、全体でも3,706→4,491億円(+21.2%)へと拡大しました[1]。住民一人当たりGRPも362→486万円/人(+34.3%)と大きく伸長しています。
鹿沼市の経済は、製造業(ものづくり産業)の稼ぐ力――域外へ商品や材料を移輸出して所得を獲得する力――に支えられています。就業者48,316人の25%が製造業に勤め、その70%が生産工程に従事するなど、製造業勤務・生産工程従事の割合は全国平均より約10ポイント高くなっています[2]。第2次産業の労働生産性は1,278万円(全国平均の120%)、従業者一人当たり雇用者所得も797万円(全国621万円)と高く、製造業は1,481人の通勤流入超過という、働く場としての吸引力も備えています。
3.見えてきた課題――付加価値の流出と人材の偏り
もっとも、事業所単位でみた製造業の労働生産性は全国平均の85.8%にとどまります[3]。これは、地域で生み出した付加価値の一部が域外の本社等へ移転する「下請け構造」の可能性を示しています。あわせて、研究開発やデザインなど専門的・技術的職業の層が薄く、製造業に就く市民の約4分の1(3,189人)が、希望する職に就くために市外へ通勤しています。
すなわち鹿沼市の課題は、ものづくりの“集積”を、どうやって付加価値を生み続ける“基盤”へと進化させるかにあります。栃木県全体の第2次産業の労働生産性(1,390万円)に対し鹿沼市は92%にとどまっており、ここにこそ鹿沼市の可能性があります。
4.「基盤」への進化に向けた2つの視点
人口が減るからといって縮むのではなく、「稼ぐ力を核に、地域の魅力と機能を更新し、ものづくり人材を呼び戻す」。そのために、(1)新たな市場を開拓して外から稼ぐ視点と、(2)バリューチェーンを地域内に取り込み、産業集積をクラスターへと昇華させて域内を強くする視点、という2つの視点から戦略を描きます。
クラスターの競争優位を検討するダイヤモンド・モデルで見ると、鹿沼市は技能・人材・土地利用といった「要因条件」には恵まれる一方、「需要条件」「関連・支援産業」「企業戦略・競争」には不足があります。いいかえれば「不足が多い=伸びしろが大きい」のであり、不足を埋める政策的な後押しがあれば、次の段階へと進むことができます。
5.3つの具体提案
こうした考え方に基づき、鹿沼を象徴する3つの産業に、それぞれ一手を講じます。
「木工」では、“微住”のきっかけを生み、地域ぐるみで体験や技能訓練の機会を提供する仕組みを整え、「鹿沼で学び、鹿沼で働き、鹿沼で一人前になる」道筋を可視化します。
「金属加工業」では、バリューチェーンの内在化を図るクラスター戦略に加え、極めて高い技術力が求められる宇宙産業等の成長市場へ地域をあげて挑戦し、技術を世界に通用するブランドへと高めます。
「園芸」では、全国に知られる鹿沼土のブランドを核に、東北自動車道を活かして域外からアクセスしやすい立地に、ターゲットを絞った“エッジの立った”新たな園芸拠点を整備し、発信力とブランド力を高めます。
6.おわりに――専門推進会社「株式会社つくる(仮称)」
これらに共通するのは、鹿沼が培ってきた多様な地域資源を統合的に束ね直し、新たな取り組みを「つくる」という発想です。その担い手として、産・官・学・金・労・言が垣根を越えて参画・共同出資する専門推進会社「株式会社つくる(仮称)」の設立を提案します。狙うのは新規の市場・顧客であり、既存顧客と競合しないため、各社は安心して力を持ち寄れます。「つくることが、次のつくるを呼び込む」――この好循環を生み出します。
鹿沼市は既に、ものづくり産業の集積という強い資源を持ちます。これをデザイン・需要・教育・観光・輸出を通じて一つのエコシステムへ束ねたとき、鹿沼市は「ものをつくるまち」を超え、「価値を生み続けるまち」として、100年後も輝くでしょう。
[1]環境省・株式会社価値総合研究所「地域経済循環分析」(2022年)。
[2]総務省「経済センサス‑活動調査」「国勢調査」。
[3]同上。属地・属人の別により労働生産性の水準は異なります。
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